ITAMサービス

株式会社富士薬品 様

https://www.fujiyakuhin.co.jp/

現状の視える化からIT資産管理の設計・運用、そしてその先へ。ITAMサービスがゼロから導いてくれました
※IT Asset Managementの略称

富士薬品グループは、1930年に富山県において配置薬の販売業からスタートし、現在は配置薬販売のほか、ドラッグストア・調剤薬局、医療用医薬品の製造・販売、医薬品の研究開発事業などを展開する、複合型医薬品企業だ。

株式会社富士薬品の情報システム統括部では、研究所から製造現場、訪問営業、店舗まで、幅広い業態のIT機器の管理を一手に引き受けている。管轄しているPCは約7,000台、キャッシュレスレジスターが約3,000台、さらにスマートフォン、タブレット、配置薬事業用のハンディターミナルも相当な数がある。

現在これらのIT機器は、ITAMサービスの導入によって管理が進められているが、かつては状況の把握が難しく、混沌とした状態だったという。情報システム統括部の河中啓之部長と高野聖司次長に、まずは当時を振り返っていただいた。

その都度必要な製品を買う、現場主導の個別調達。部員はシステムの展開・運用業務に追われていた

「当時は多くの機器を、それぞれの事業部の判断で個別に購入していました。必要になったらその都度買うという発想で、その時に必要なスペックで製品を選んでいたため、メーカーも機種もバラバラでした。どこに何があるかが正しく把握できず、個々の廃棄のタイミングも統制が難しい。使わなくなったPCがバックヤードの倉庫に積まれていたこともありました」(河中氏)

「ITを管理する体制も整っていませんでした。当時は積極的なIT人材の採用もしておらず、店舗や配置薬の事業所から異動してきたスタッフが約1,300の店舗、約300の配置薬の事業所、本部のIT機器の修理やセットアップのために、毎日走り回っていました。それに加えてシステムの展開・運用業務をするだけで精一杯でしたね」(高野氏)

どこから手を付けていいかわからないという悩みに応える。課題の可視化から始まるITAMサービス

これでいいのか?と疑問はもっていたが、何をどこから進めていいかわからない。そんななか、2017年に参加したIT資産管理関連のカンファレンスで、NECキャピタルソリューションの説明を聞いたことが、IT資産の管理を根本から見直す契機になった。

株式会社富士薬品 企画管理本部 情報システム統括部 部長 河中 啓之 氏
株式会社富士薬品
企画管理本部
情報システム統括部 部長
河中 啓之 氏

「他社ではこんなふうにIT資産を管理しているのか、と認識を新たにしました。同時に、このままではいけないということを強く感じましたね。現状を話して、『まずどこから手を付けていいか』と、相談したのです。一般的なIT資産管理の製品やソリューションがあるのは知っていましたが、その導入前段階の状況の整理をしてくれるところ、そうしたソリューションをどう使えばいいのか、相談に乗ってくれるところを求めていたのです」(河中氏)

NECキャピタルソリューションにすすめられたITAMサービスは、IT資産管理を最適化するために、現状の可視化から対応策の検討、LCM(Life Cycle Management)の導入設計、導入作業、運用までの一連の流れをきめ細かく支援するというもの。まさに、現状を精査し、課題を明確にするところから始めたいという同社の要望にぴったりのサービスだった。ITAMサービスは、自社の課題に対応して必要なサービスだけを切り出して利用することも可能だが、富士薬品ではトータルでの導入を決めた。

ITAMサービスの取り組みは、まずどんなIT資産がどこにどれだけあるのか、ライセンスが適正に使用できているのか、それぞれの現場でどういった業務フローで管理、運用されているのかといった実態を可視化・把握することから始まった。当初は提出したPCの台数と、実際の数が大きく違うというような混乱があったという。

しかし、ロードマップを作成して、調達方法を見直し、運用体制を整備する、そして規定・ルールの策定につなげていくというプロセスを一つひとつ踏んでいくことにより、IT資産とライセンスを一元的に管理する土台が2018年度から2019年度にかけて整っていった。

社内には、LCM導入により、統制のとれたキッティングと端末展開を実施。また、LCMが提供するヘルプデスクを設置し全国の事業所・店舗からの問い合わせや故障の連絡などを一カ所で受け付け、そこから代替機のキッティングや配送などの作業が、ルールにのっとり円滑に運用されるようになった。

ITAM図面

限りあるリソースの投入先がコントロールできるようになり、若手スタッフの動きが変わってきた

株式会社富士薬品 企画管理本部 情報システム統括部 次長 高野 聖司 氏
株式会社富士薬品
企画管理本部
情報システム統括部 次長
高野 聖司 氏

ITAMサービスを導入した成果を、おふたりはどのように感じているのだろうか?

「それまでは作業に追われるなかで、『なんとかなる』『回っていればいい』とやり過ごしていたリスクと課題が明確になりました。そして、業務のどこに力を注げばよいか、限りあるリソースをどの部分に投入すればよいかが整理できたことで、情報システム統括部が全体をコントロールできるようになりました。これは大きな変化でしたね」(高野氏)

「当社は人の出入りが多い企業です。特に店舗はスタッフや薬剤師など、日々新しい採用があります。これまでは入社があるごとに、社内の若手が他の業務を中断して一生懸命セットアップをしていたのですが、NECキャピタルソリューションさんから『皆さんは、いわれるがまま作業をする役割でなく、リードする立場になりませんか』と。そんなふうに真剣にアドバイスをしてもらえたことがよかったです。一緒に仕組みを変えていくなかで、若手スタッフの動き方、考え方がずいぶん変わりました」(河中氏)

IT資産を計画に従って月額課金の形式(レンタル)で調達するようになったことで、予算が立てやすくなるというメリットもあった。

「必要になったら買うという方法では、都度バラバラな金額でキャッシュアウトが発生します。必要部署に提供することが精一杯で、管理できていなかったため、年度実績を見るまではトータルでIT資産の経費が把握できませんでした。しかし、LCMによって調達や廃棄を計画的に行えるようになったので、コストが予測でき、予算を立てやすくなりました。また、壊れたPCを修理・廃棄せずに積んでおいたり、必要以上のソフトウェアを購入したりといった、過剰なIT資産を持たなくてすむようになったのも、メリットのひとつです」(河中氏)

突然のテレワークへの移行!PCの状況を把握していたから、急な対応が可能だった

河中氏が「このサービスを実施してよかった」ともっとも強く感じたのは、2021年春に新型コロナウイルスの感染拡大に伴う緊急事態宣言が出たときのことだという。

「その時点では、PCが標準化され、安全性が担保されているものが明確になっていました。ですから、明日からテレワークを実施させたいと相談された時も、すぐに『持ち帰ってもよいPCを特定できるので、大丈夫』と指示が出せたのです。オンラインストレージサービスのBoxも導入していましたし、Microsoft365の運用も始めていたため、オンライン会議も含め対応でき、スムーズにテレワークに移行できました。以前の状態だったら、出社しなければ仕事ができなかったはずです。本当によかった。」(河中氏)

会社の成長に合わせてIT資産管理の仕組みも変える必要がある。内部統制の機運の高まりが追い風に

今回の業務改革は、IT資産の運用に関する社内のルールを大きく変えるものだった。社内の理解はどうやって得たのだろうか?

「3年ぐらい前から、社内の内部統制やコンプライアンスをきちんとやっていこうという機運が高まってきていました。その動きにITも歩調を合わせて、業務改革を進めることができたのです。もちろんお金もかかるし、なぜやらなければいけないのか、という声もありましたが、さほど大きな抵抗ではありませんでした。時代の変化や会社の成長に合わせて、仕組みも変えていかなければいけないことを説明して、理解を得ることができました」(河中氏)

「現場では抵抗もありました。小売りは現場の要望にすぐに応えることが求められます。例えば、以前は個別に、『新人が入るから新しいPCを3日後に届けてくれ』といったような要望もありました。それを、今度からは少なくとも半月前に依頼してほしい、不具合の問い合わせはシステム部員個人ではなくヘルプデスクにしてほしいとお願いしたわけですから、反発されますよね。それでも、全社がひとつのルールにもとづいて動いていくということが浸透するにしたがって、徐々に理解してもらえるようになりました。すぐに使える状態にセットアップした機器を届けられますし、故障時はセットアップ済みの代替機が届くといったバックアップもしていますから。ヘルプデスクの利用にも慣れて、社内のITリテラシーが上がってきています」(河中氏)

一周目の課題を整理してコスト最適化を意識。社内のリソースは、生産性の高い「攻めのIT」へ

2023年度には、調達から廃棄、返却までのLCMサイクルがひと回りする予定だ。おふたりは、IT資産の管理や情報システム業務のこれからをどう見ているのだろうか?

「今後は店舗を中心にモバイルが主流になっていきます。ですから1サイクル目の課題を整理しながら、モバイルの標準化を進める必要があります。その際には、ロットを大きくしながら、コスト最適化を意識した導入をしていきたいと考えています。店舗は特に利益重視でコストに厳しいですから、オーバースペックの機器を入れても仕方がありません。必要なところに必要なものがあって、無駄がないということを大切にしたいと考えています。NECキャピタルソリューションさんには、『もっとこうすれば便利にできる、最適化できる』といったアドバイスをしていただけると、うれしいですね」(高野氏)

「今回のITAMサービスの導入には、『IT部門の役割を変えよう』という発想がありました。 『守りのIT』である運用業務は今後もアウトソーシングを進める一方で、情報システムのソリューションは、より上流の生産性の高い分野に振り向けていきたいですね。各事業部と協働して、新しいデジタルサービスのアイデアや企画を提案するといった、収益の拡大につながる『攻めのIT』の取り組みも進めたいと考えています」(河中氏)