Windows展開サービスを使って、Windows 10をクローニング展開するには?(前編)

展開支援
はじめに
本記事をご覧いただいている皆様の職場では、PCの展開作業を自社で実施されていますか?それとも専門業者に委託されていますか?
Windows 7のサポート終了(2020年1月)を見据え、Windows 10の本格的な導入を検討されている企業が増えています。その際、1台ずつセットアップするのではなく、効率よく大量にPCを展開したいとお考えのご担当者様も多いことでしょう。
本記事では、Windows展開サービスというWindows 2016 Serverに標準搭載されている役割を使って、Windows 10を大量展開する手順について前編・後編に分けてご紹介します。
- Windows展開サービスとは?
- なぜ、Windows展開サービスを使うのか?
- Windows展開サービスのインストール手順
- DHCPサーバーのスコープ作成手順
- Windows展開サービスの構成手順
- インストールイメージおよびブートイメージの登録手順
- まとめ
なお、本記事はWindows 2016 Server、Windows 10(1803)にて環境を構築し、記事を作成しています。今後、OSバージョンアップ等により記載内容が変更となる場合がありますので、予めご了承ください。
Windows展開サービスとは?
Windows展開サービス(WDSとも言います)とは、WindowsのサーバーOSに含まれる役割の一つで、Windows OSをネットワーク経由で複数のPCにインストールすることができるサービスです。
予め、企業が必要とするアプリケーションをインストールしたPC(参照コンピューターと言う)を用意し、そのディスクのイメージを複数のPCに一気に配信することで、短時間で大量のPCを効率的にセットアップすることができます。このイメージを他のPCのディスクにコピーすることをクローニングとも言います。
なぜ、Windows展開サービスを使うのか?
Windows 10を展開する方法は他にもあります。Windows展開サービスはWindows 2003 Serverにも実装されていた昔からある役割です。Windows 10になってプロビジョニングパッケージ、Windows AutoPilotという新しいものがでてきています。しかし、それぞれメリット・デメリットがあり、今すぐにWindows展開サービスに置き換えられるほど柔軟なものではないとも考えており、十分な事前検証が必要です。
プロビジョニングパッケージは、無線LANの設定ができたり、Azure Active Directoryに参加できたり便利な機能があります。しかし、タイムアウト等でプロビジョニングパッケージの適用に失敗してしまう可能性があるため、多くのアプリケーションをインストールする企業では現実的な方法ではないと考えます。
Windows AutoPilotは、前提条件としてAzure Active Directory PremiumおよびIntuneを利用していないと使えないので、手軽にできるものではありません。また、Intuneによるアプリケーション配信は、exe形式のアプリケーションには対応していないため、別の手段を検討する必要があります。
Windows展開サービスは、従来からあるやり方なので手軽に試すことができます。参照コンピューターにインストールしたアプリケーションや各種設定も展開できるため、カスタマイズ性が高く、品質維持も容易です。一方で、Windows 10になり、年に2回機能更新プログラムがリリースされるため、イメージの更新頻度が増えることが懸念点となっています。
最終的には、PCの利用用途・規模等によってどの展開方法がベストなのかを模索する必要があると考えています。
Windows展開サービスのインストール手順
Windows展開サービスのインストール手順について記載します。今回は、スタンドアローン構成にてインストールします。動作に必要なDHCP、DNSの役割についても同時にインストールします。なお、サーバーのIPアドレスは固定IPアドレスを割り当てておきます。
- Windowsサーバーに管理者権限でログインします。
- スタートメニューから[サーバーマネージャー]をクリックします。
- 以下のような画面が表示されますので、[役割と機能の追加]メニューをクリックします。
- 「役割と機能の追加ウィザード」画面が表示されますので、<次へ>ボタンをクリックします。
- 「インストールの種類と選択」画面が表示されますので、そのまま<次へ>ボタンをクリックします。
- 「対象サーバーの選択」画面が表示されますので、そのまま<次へ>ボタンをクリックします。
- 「サーバーの役割の選択」画面が表示されますので、「DHCPサーバー」、「DNSサーバー」、「Windows展開サービス」を選択し、<次へ>ボタンをクリックします。
- 「機能の選択」画面が表示されますので、そのまま<次へ>ボタンをクリックします。
- 「DHCPサーバー」画面が表示されますので、そのまま<次へ>ボタンをクリックします。
- 「DNSサーバー」画面が表示されますので、そのまま<次へ>ボタンをクリックします。
- 「WDS」画面が表示されますので、そのまま<次へ>ボタンをクリックします。
- 「役割サービスの選択」画面が表示されますので、「トランスポートサーバー」、「展開サーバー」が選択されている状態で、<次へ>ボタンをクリックします。
- 「インストールオプションの確認」画面が表示されますので、<インストール>ボタンをクリックします。インストールが完了するまでしばらく待ちます。
- 「インストールの進行状況」画面が表示されます。インストールが完了したら、[DHCP構成を完了する]メニューをクリックします。
- DHCPインストール後の構成ウィザードが表示されますので、<コミット>ボタンをクリックします。
- 以下のような画面が表示されますので、<閉じる>ボタンをクリックして画面を閉じます。
- 「インストールの進行状況」画面に戻り、<閉じる>ボタンをクリックして画面を閉じます。
DHCPサーバーのスコープ作成手順
DHCPサーバーのスコープ作成手順について記載します。Windows展開サービスを利用する際、Windows OSをインストールするPCをネットワーク上にあるブートイメージから起動しますが、その際にIPアドレス取得が必要となります。DHCPサーバーが割り当てるIPアドレス範囲を指定します。既に動作しているDHCPサーバーがある場合は、本手順をスキップしてください。
- サーバーマネージャーに戻り、右上部にある[ツール]-[DHCP]メニューをクリックします。
- 以下のような画面が表示されます。左ペインにある[IPv4]メニューを右クリックし、[新しいスコープ]メニューをクリックします。
- 「新しいスコープウィザード」画面が表示されます。<次へ>ボタンをクリックします。
- 「スコープ名」画面が表示されます。任意の名前、説明を入力し、<次へ>ボタンをクリックします。
- 「IPアドレスの範囲」画面が表示されます。スコープが割り当てるアドレスの範囲を指定し、<次へ>ボタンをクリックします。
- 「除外と遅延の追加」画面が表示されます。除外したいIPアドレスがあれば指定します。<次へ>ボタンをクリックします。
- 「リース期間」画面が表示されます。問題なければ<次へ>ボタンをクリックします。
- 「DHCPオプションの構成」画面が表示されます。<次へ>ボタンをクリックします。
- 「ルーター」画面が表示されます。デフォルトゲートウェイを指定し、<次へ>ボタンをクリックします。
- 「ドメイン名およびDNSサーバー」画面が表示されます。「親ドメイン」およびDNSサーバーのIPアドレスを入力し、<次へ>ボタンをクリックします。
- 「WINSサーバー」画面が表示されます。必要に応じてWINSサーバーのIPアドレスを入力し、<次へ>ボタンをクリックします。
- 「スコープのアクティブ化」画面が表示されます。<次へ>ボタンをクリックします。
- 以下のような画面が表示されますので、<完了>ボタンをクリックしてウィザードを終了します。
Windows展開サービスの構成手順
Windows展開サービスの構成手順について記載します。今回の手順では、Active Directoryと統合しないスタンドアローンサーバーとして構成します。
- サーバーマネージャーに戻り、右上部にある[ツール]-[Windows展開サービス]メニューをクリックします。
- 以下のような画面が表示されます。サーバー名を右クリックし、[サーバーの構成]メニューをクリックします。
- 「Windows展開サービスの構成ウィザード」画面が表示されます。<次へ>ボタンをクリックします。
- 「インストールオプション」画面が表示されます。今回は、Active Directoryサーバーを用意しないため、「スタンドアロンサーバー」を選択し、<次へ>ボタンをクリックします。
- 「リモートインストールフォルダーの場所」画面が表示されます。可能であればシステムパーティション以外のパスを入力し、<次へ>ボタンをクリックします。警告画面が表示された場合、<はい>ボタンをクリックして続行します。
- 「プロキシDHCPサーバー」画面が表示されます。同一サーバーにDHCPサーバーが実行されていますので、そのまま<次へ>ボタンをクリックします。
- 「PXEサーバーの初期設定」画面が表示されます。「すべて」ラジオボタンを選択し、<次へ>ボタンをクリックします。
- 「タスクの進行状況」画面が表示されます。<完了>ボタンをクリックします。以下のようにサービスが起動しなかった場合は、Windows展開サービスの管理画面より、[操作]-[すべてのタスク]-[起動]メニューをクリックして、サービスを起動します。
インストールイメージおよびブートイメージの登録手順
インストールイメージおよびブートイメージの登録手順について記載します。これからOSをインストールしたいPCをネットワーク経由で起動し、Windows 10(1803)のインストールイメージを実行できるようにインストールイメージおよびブートイメージを登録します。
- Windows 10(1803)のISOイメージを入手し、サーバーにマウントします。
- サーバーマネージャーより、右上部にある[ツール]-[Windows展開サービス]メニューをクリックします。
- 以下のような画面が表示されます。左ペインにある[インストールイメージ]メニューを右クリックし、[インストールイメージの追加]メニューをクリックします。
- 「イメージの追加ウィザード」画面が表示されます。任意のイメージグループ名を入力し、<次へ>ボタンをクリックします。
- 「イメージファイル」画面が表示されます。マウントしたWindows 10(1803)のISOイメージより「install.wim」ファイルを参照し、<次へ>ボタンをクリックします。
- 「使用可能なイメージ」画面が表示されます。サーバーに追加したいイメージを選択します。また、「選択した各イメージについて既定の名前と説明を使用する」のチェックを外し、<次へ>ボタンをクリックします。
- 「イメージのメタデータ」画面が表示されます。任意のイメージの名前、イメージの説明を入力します。機能更新プログラムのバージョンを記載しておくと分かりやすいでしょう。<次へ>ボタンをクリックします。
- 「要約」画面が表示されます。<次へ>ボタンをクリックします。Windowsのイメージが追加されるまでしばらく待ちます。
- 「タスクの進行状況」画面が表示されます。<完了>ボタンをクリックします。
- 「Windows展開サービス」画面にて、インストールイメージが追加されていることを確認します。
- 同様の手順で、[ブートイメージ]メニューを右クリックし、[ブートイメージの追加]メニューをクリックします。
- 「イメージファイル」画面が表示されます。マウントしたWindows 10(1803)のISOイメージより「boot.wim」ファイルを参照し、<次へ>ボタンをクリックします。
- 「イメージのメタデータ」画面が表示されます。任意のイメージの名前、イメージの説明を入力し、<次へ>ボタンをクリックします。
- 「イメージの追加ウィザード」画面が表示されます。<次へ>ボタンをクリックします。
- 「タスクの進行状況」画面が表示されます。<完了>ボタンをクリックします。
- 「Windows展開サービス」画面にて、ブートイメージが追加されていることを確認します。
まとめ
本記事では、Windows展開サービスのインストール手順からインストールイメージおよびブートイメージの登録手順までご紹介しました。少し長くなりましたが無事セットアップできましたでしょうか?
今回の手順で、Windows OSをネットワーク経由から新規インストールするための準備が整いました。しかし、企業向けにカスタマイズされたイメージを配信するまでには、参照コンピューター(マスターPCとも言う)を作成し、そのイメージをキャプチャーしてサーバーに登録する作業が必要となります。この続きは、後編のブログ記事にてご紹介します。
なお、弊社ではPCのリース・レンタルといったファイナンスサービスだけでなく、参照コンピューターの作成支援、キッティング、作業代行、専用ラベル作成・貼付、マスターイメージの更新管理、センドバック保守といった情報システム部門の担当者様の手間のかかるPC展開作業を代行するサービスを提供しておりますので、ご興味がありましたら、ぜひ弊社までお問い合わせください。
関連サービス:展開・運用業務支援サービス